文明は私の気づかぬうちに進化していた


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橿原神宮前から岐阜羽島まで一気に来た。

ホテルを出た時点で葛藤はあった。
やはり飛鳥まで来ているのだし、未練を残して後悔するよりは斑鳩へ行くべきか、それとも今回は潔く諦めて、代わりに、近くの今井町を歩いてみようか等々。
全然潔くない…。

これといった自覚はないが、10日も旅を続けていれば、旅の疲れもあるだろう。
すでに気力と体力が釣瓶落しの年齢である。
だから無理は禁物と戒め、今日は移動日に徹するのみと割り切った。

取り敢えずナビを岐阜羽島駅にセットし、推奨ルートをなぞってみたが、その昔、速度違反で覆面に捕まった東名阪を通るコースが表示された。

推奨するだけあって、確かにベストのルートだろう。
だが面白くない。

そこで距離優先や一般道優先、さらに有料道路優先や別ルートなどで再検索したのだが、有料道路優先以外は所要時間が倍になってしまう。

仕方なく、推奨ルートでやって来た。
所要時間、約3時間弱、ナビの予測とほぼ同じだった。
時間が余って、これだったら今井町歩けたじゃん!

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今夜のホテルを確認し、さて遅いお昼でもと駅周辺を走り回った。
ある程度承知していたが、岐阜羽島駅周辺は、ホントに何もない。

岐阜まで来てガストかよ!
冷麺である。
ドリンクバーで、アイスコーヒーを5杯お替りした。

たかが5杯程度では、店の利益は揺るがないと、どこかで聞いたことがある。

そんなことを考えること自体セコい話で、潜在意識が日常の行動をすべてコントロールしているのだなと、岐阜羽島にて悟る。

しみじみと人生の秋を生きている実感が湧いた。
人間とは、1杯の冷麺と5杯のアイスコーヒーで覚醒できる生き物なのだ。

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チェックインの時間になったのでホテルに入った。
結婚式場がメインらしく、だからホテルだってそこそこかと思いきや、一番お値段の張るお部屋なのに、どうもしっくり来ない。

湯沸しポットに水を入れようとしても、室内の蛇口はユニットバスの洗面台のみ。
なので直接ポットに水を入れられない。

そこで、コップに1杯ずつ水を入れたのだが、沸かしたお湯がカルキ臭で飲めたものではなかった。
部屋を出たすぐ横に自販機があったのでいろはすを購入し、問題は解決した。

まあ不満といえば、後はベッドサイドのラジオとタイマーが壊れていることくらいで、ツインのシングルユースは爽快だし、ベッドもセミダブルで、寝相の悪い私には最適である。

だが、今回の旅では、かなり質の低下した宿ではある。
朝食のみのプランで予約したら、フロントでバウムクーヘンくれた。
プランのうちなんだそうな。

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ホテルの真向かいに和風のファミレスがあったが、入る気になれず、時間も早いことだし、逆方向へ歩いてみたら、回転寿司店があった。

他に探すのも面倒なので入店したら、
「タッチパネル式ですがよろしいでしょうか」
と訊かれた。

何となく想像はつくが、回転寿司はここ何年も利用していないので、曖昧に、
「はい、よろしいです」
と、さも全て了解している体を装って頷いた。

接客のお姐さんは、(このジジイ、使い方知らないだろうな)と瞬時に判断したものと思われる。
商売柄とはいえ、よくぞ見破ったものだ。

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粉茶を淹れるのにやや戸惑ったものの、タッチパネルの使い方はすぐにマスターした。

「ご注文の品が間もなく到着します」
機械がしゃべるんじゃねえよ、と思っても、到着時刻が迫っていることを知らせてくれるのは便利だし、ラジオなどはとっくの昔からしゃべっているので驚くほどのことではない。

ものすごい速さで注文のネタはやって来て、目の前でピタリと止まった。
最近の回転寿司屋さんは、どこもほぼこのスタイルなのだろう。

私がよく通っていた回転寿司屋さんは、カウンターの内側に職人さんが数人いて、いつも一番のベテラン職人さんの前に座り、回るお寿司を無視して、
「ゲソ下さい、タレのかわりにサビで」
「ミル貝、シャリ少な目で」
などと直接注文していた。

どんな人が握っているかわかっていると、どことなく安心感があって、素人が生意気にも「シャリ」などと言っても、
「あいよっ!」
と元気に答えてくれた。

このお店は握っている人の顔が見えないから若干の不安があるが、中トロだけは本当に美味しかった。
ノドグロの炙り、なんてのもあって初めて注文したが、会計の時にそのノドグロが600円超えと知って、それほどの価値はなかったなと思った次第。

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お店の人との接点は、入店時と会計のみだった。
あ、会計のところをタッチしたら、お姐さんが枚数を数えに来たっけ。
初めて入ったお店で、どの絵皿が幾らなんてわからないものね。

とにかく何もない岐阜羽島駅周辺で、食事にありつけただけでもよしとしよう。

タッチパネルには驚いたが、世間では当たり前らしいし、これ以外でも、私の知らぬところで様々な文明が発達しているのだろう。

でも、お寿司は目の前で握ってもらって、素早くポンと口に入れるのが一番美味しいように思う。
AI 技術がもっと進化して、いずれはロボットやアンドロイド相手にカウンターで寿司をつまむのだろう。

それ以前に、魚をさばいたり下ろしたりの、人間の微妙な感覚や力の入れ加減などが頼りの技術も、すべて機械が代行してくれる時代になる。

すでにナビや家電がしゃべるのが当たり前になっていて、しゃべるのが億劫な私は、それを半ば喜ばしいことと捉えている。
おしゃべり代行AI 知能搭載の分身(私のアンドロイドは無気味だろうから、いかにもロボット然としたロボットがいい)が出来たら嬉しい。

そのうちに、食べる方も機械になったりして…。
恐竜が亡びて人類が栄えたように、今度は人類が亡びてAI が栄える時代が来るのだ。

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ホテルからの夜景。
ひかりとのぞみはものすごいスピードで駅を通過し、名鉄羽島線はのろのろと駅を出入りする。

駅周辺にも何軒かのビジネスホテルはあるが、泊まりたいと思うホテルはなかった。
岐阜羽島駅周辺では、ここが一番いい宿のようだ。

中トロ(だけ)が、すごくおいしかった。
これが羽島での一番の印象。
食べる楽しみは代行させたくない。
でも、旅行中は栄養が偏るね。

さて、明日は今回の旅の中で唯一、必ず行こうと最初から決めていた場所へ向かう。

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