一泊三食シャワーのみ64,800円


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朝、八時半頃に、4階のHCUから最上階の10階へと移動しているちょうど同じ時間に、高貴なお方が百歳で亡くなられた。

その病室はワンフロア下の9階VI Pルームだったとか。
暗くなって看護師さんから聞いた話だから情報は確実である。

こちらは個室(大部屋は無い)のテレビで知る情報ばかりで、9階以外の看護師さんたちも、訃報はテレビで初めて知ったとか。

1階分、9階より眺望は良い。
隅田川はほとんどがビルにさえぎられているが、右端、わずかに勝鬨橋の南詰が見える。
ということは、病室は南向きで、日当たり良好。
正面の対岸は月島、その奥に晴海。


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弔問に訪れる高貴なお方のお身内のためにエレベーター1基が貸し切りとなり、外では午前中いっぱい、テレビマンたちが中継をしていた。

中継といっても、病院正面の映像を流しながら、わかっているだけの乏しい情報を伝えているのみだった。

昭和らしい昭和もこれで終わったか、歴史の生き証人がまた一人消えてしまったか、といった感慨のような気分になる。

正面玄関も、午後にはいつもの光景に戻った。


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昨日の午後、造影剤を入れる予定が、いつまで経っても前がつかえているとかで、順番がなかなか回って来なかった。

今日になって知ったことだが、亡くなられた高貴なお方の奥方が検査入院されたとかで、こちらの待ち時間が延びたようだ。

それでも前日に入院したことで、奥方はやんごとない高貴なお方の臨終に立ち会うことが出来たわけだ。
(奥方だって、やんごとないお方なのだ)

単なる偶然なのか、それとも見えない何かの差配なのか、こればかりは神のみぞ知ること。



個室内は以下の通り。
一番料金の低い部屋なのでバスタブが無い。

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病院食だから、内容はこの程度の品数。

それに塩分控え目の特別食なので、かなり薄味で提供される。

水分にしても、浮腫改善のため、一日1,000mlに制限されている。
水では味気ないので、500mlのほうじ茶を2本、差し入れる。

院内にはテイクアウト専門のスタバや売店、レストランもあるが、病院の周囲にはコンビニもあり、品揃えは院外の方が豊富だ。

もっとも、緑茶も制限されているので、買い物はほうじ茶か麦茶と新聞程度で事足りる。
きっとカフェインがアウトなのだろう。


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10階フロアは中央に広い談話スペースがあり、そこを境にして、南側は一般病棟、北側には緩和ケア病棟。
こちらは東向きである。

緩和ケア病棟のドアが開き、車椅子が音もなく談話スペースの隅へ来て止まった。

脚部エレベーティング仕様の介助用電動リクライニング車椅子に乗った老婆が、無言で、遠くに見えるスカイツリー方向をじっと見つめていた。
その横には息子らしき中年男性が、やはり無言で寄り添っている。

親子ですべてを了解した、諦念とも言えない静かな感情が融合しているようでもあり、とても崇高な光景を目撃した気持ちになる。

10分ほどで緩和ケア病棟に戻って行った。
表情のない老婆の痩せた顔が脳裏に残った。

釣瓶落としの日が落ちて、街はこれからが賑わいの本番だが、院内は薄くクラシック音楽が流れるばかりで、静寂の中にある。

ちなみに、私の親族は、この病院で二人逝った。


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さて、ここで下世話なお金の話になるのだが、一番下のランクの病室でも一日32,400円。
これはロジックに近い表記で、一泊すると二日にまたがるので、実際は二日分の費用が必要だ。

だから一泊ではなく、「一日の室料」表記になる。
消費税分でカプセルホテルに一泊できる金額ではないか。
今さらだが、腹立たしい税金だ。

緊急で入ったオール個室の病院だから仕方ないのだが、半月も入院すれば、それだけで50万円近くになる。
いわゆる差額ベッドなので、高額医療費の対象ではない。

入院手続きで、すでに預り金を20万円納めているので、退院が早ければ追加の出費も腰が抜ける額にはならないだろうが、入院している当の老婆は生命保険に入っておらず、ただの年金暮らしの身なので、すべて私の出費になる。

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泣き節はさらに続く。
昨年、高額の買い物をして、これからは極力、出費を抑えようと決めたばかりなのに、自宅では固定電話(FAX)が壊れ、レンジが壊れ、アイロンも壊れた。
現在、ほぼ無収入の身なので、更なる出費は将来への恐怖でしかない。

それでも、実家から一番近いからというだけで決めたクリニックで、医師が老婆の病気を見つけてくれたからこそ、病状の悪化を食い止められたと考えれば、全財産をつぎ込んでも安いくらいだし、後悔などは微塵もない。
絶対に何とかならないのだが、ここは何とかなるさと、お気楽に構えよう。

老後のための蓄えが、湯水のように流れ去って行くよ、ははは。
今はこのくらいの能天気加減が理想なのだ。

在宅介護や在宅医療を強力に推し進める国には、期待などしない。
いっそ永田町か霞が関で野垂れ死んだら本望に思う。

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病室から見る夜景はそこそこきれいだった。

それでも昭和30年代のこの辺りを知っているので、懐古趣味と開発への反発心が複雑に作用して、それほど夜景を楽しむことができない。

人口が減り、空き家も急速に増えているのに、高層マンションが増え続ける理由が不明である。
私は馬鹿にもかかわらず、高所が苦手である。

病室に泊まる必要もないので、途中でコンビニ弁当を買って、二階建ての実家(築百年以上のボロ屋)へ戻り、明日も、早朝出勤ならぬ早朝見舞いに来よう。

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変貌を続ける東京の中で、昔から変わらない光景を目にすると、心が和み、ストレスが霧消するような気がする。

脳内ではオキシトシンが分泌され、アルファ波も現れる。

物価さえ安ければ、狭いけれど実家だって住みやすいのだ。
(実際のところ、物価は高い)

交通の便は良いし、銀座だって日本橋だって、築地だって豊洲だって、全部歩いて行けるんだぞ。

それに、見下ろす夜景より、見上げる夜景の方がきれいなんだぞ、と強がってみる、ははは。



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