七回忌


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春とは名ばかりの頼りない午後の陽が霊園全体を斜めに投げかけ、本当の春を待ち焦がれているように見える。
君が逝ってからもう六年の月日が流れてしまった。

軽く一礼し、墓苑に足を踏み入れる。

東日本を襲った大震災も原発事故も知らず、相変わらず景気が悪いままであることも知らず、ぼくがこんなジジイになったことも知らず、君はぼくよりも六歳も若いままで眠っている。
でも遺された君の家族は、静かで良いところに安住の地を定めてくれたね。

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互いに親友と認識し、それを照れくさくもなく言葉にも出していた仲なのに、ずいぶん無沙汰をしてしまった。

たくさん並んだ墓石をひとつずつ確認しながらやっと探し当て、思わず口を突いたのが、
「久しぶり、元気だった?」
とは自然に出た言葉。

故人の墓前で元気だった?とは、あんまりだよね。

多くの人は、君が空にいるとか星になったと言うし、ぼくも漠然とそう思って来た。

でもこうして薄い石板一枚隔てただけの奥には、確かに君がいる。
空や星なんて嘘だ。
君はこうして、ぼくの目の前にいるじゃないか。

まだ若く、家族のために働く気満々だった君は余命宣告もされず、それでも死期が迫っていることに、ぎりぎりになって気付いていた。
それがおそらく一週間前くらいだったと思う。

騙されている間だけは、一縷の望みを信じてポジティブな心境でいたのだろうか。
それとも、本当は最期まで現実を受容できなかった煩悶を抱えていたのだろうか。

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無意識に墓石を撫で、気がつくと墓石を抱きしめていた。

花を活けて線香を焚き、数珠を手に合掌していると、我慢していたものが溢れ出た。
周囲に誰もいないことを幸いに、遠慮なく泣かせてもらった。

何度も詫びるが、長い間の無沙汰、本当にごめん。

ぼくは昔のバンド仲間とは音信が途切れて久しいが、君を慕っていたみんなそれぞれがこの墓所を探し当て、すでに何度もお参りを済ませているはず。

親友の契りを交わしたぼくが後塵を拝したのは、つくづく不覚だったと詫びる。

簡単に来られる場所ではないけれど、これからも必ず会いに来るよ。
以前のように、君にしか言えない愚痴を聞いてほしい。

もう永劫に叶わないことを承知で言うが、いま一度、君のドラムに合わせてベースを弾きたい。
今度はシンプルにピアノやサックスを入れて、トリオかカルテットでJAZZでも演りたいね。

 


 雨上がりの夜空に


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