数えても意味のないことを数えている


画像

有無を言わせぬ出生の理不尽と、例外を許さぬ死の残酷との狭間に生き、すでに最末期を予感していた親友は、果たして無常観を基礎とした諦念を抱いていただろうか。
健康な人間が狂気にならずにいられるのは、人間のあらゆる情熱や努力は、人間が己の存在を問うことを回避する方向に傾斜しているからである。
ヒュームやラッセルは言う。
「人間の恐怖心が神を創造した」

画像

彼は神の存在を信じはしなかったと、死が手招きする間際まで見舞いに駆けつけ、さまざまな話をする中で私は想像した。
のたうち回るほどの痛みを緩和するのはモルヒネであり、彼にとっての神は、シリンジポンプから体内に流される薬液でしかなかった。
死の前々日、いつものように病室に顔を出すと、彼の私を見る目は冷ややかなものだった。
会話はいつも通りだったが、健康に嫉妬しているようだと私は感じた。
奥さんを始め、まだ未成年の子供が三人いて、どうしてもここで尽きることだけは無念だと、無言で訴えているように思えた。

画像

常時モルヒネを入れていても、それでも激しい痛みが周期的に襲って来る。
そのたびに「フラッシュ」といって、一時的にモルヒネを増量する。
痛みに悶絶する姿を何度か目撃した。
すでに治療方法は皆無で、ただ、痛みを抑えるだけの日々にあって、一縷の希望を見い出していたのはわずか数ヶ月前までのこと。
日が経つにしたがって、次第にフラッシュの回数が増えていく。

「元気なくてごめんなさい、でもいつも来てくれて本当に嬉しい」
会話の途中でも、時々意識が飛ぶらしく、しばし無言で虚ろな表情になる。
どこを見ているのかと視線の先を追うと、そこは真っ白で何もない病室の天井。
せめて窓際にベッドを移動して、青空を見せてあげたかった。
しかしナースステーションから遠くなるので、それも不可能。

やがてどこからか、ついに迎えが来た。

かがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばう  宮沢賢治



 


 未来 1


                未 来


        あなたとの明日があったから
        ちょっぴり素晴しい夢を見れた
        ありがとう
        私 もういいから

           Sky blue 塗り込める悲しみ
           まだ愛してるから
           まだ愛してるはずだから

        ずっと眠っていたのだと思えば
        嫌なことも夢の中に閉じ込められるし
        ありがとう
        ほら もう笑えるの

           Sky blue 塗り込める悲しみ
           まだ愛してるから
           まだ愛してるはずだから

        遠回りしただけ年を重ねて
        もう悲しみも飲み込める
        ありがとう ありがとう
        私 もういいから




大した曲ではないが、彼のドラムが入る前はもっとつまらない曲だった。
それに、「夢を見れた」などと、「ら」抜き言葉を使ってしまったのも、今となっては恥ずかしい。


 


 未来 2


キーボード担当の友人が連れて来たのが、後に唯一無二となる親友の彼だった。
2月26日は彼の命日であると共に、亡き兄の誕生日でもある。
逝った人の年齢を数えても仕方ないこととはわかっていながら、つい数えてしまう。
彼岸と此岸の距離は、どのくらいの隔たりがあるのだろうか。

二週間ほど前、二晩続けて彼が夢に現れ、ずいぶん元気そうだったので安心した。
私が逝く時はエレキベースを持参するから、友よ、また一緒に、いい音を出そうぜ。


画像




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

驚いた
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

Mクン
2013年02月27日 13:32
ご無沙汰しております。
近々にどこかでお会いしましょう。
管理人
2013年02月27日 20:45
はい。
最後に会ったのは2年前のプチオフ会でしたかね。
2020年01月
         1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31   

過去の記事

テーマ別記事

最近のコメント

QRコード