君かんばせのいとおしき


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毎年8月10日になると、ああ、あの人の誕生日だなと思う。

もう30年も逢っておらず、これからもきっと逢うことはない。

歳を数え、もうそんな年齢になったかと、自分の年齢を棚に上げて感傷に沈む。

思い出すこと自体が無いから、たまさか夢に現れると驚き、そのままストーリーを反芻して甘美なひと時に身を委ねてしまう自分がいる。

夢は本人と談合せず、独断で物語を進める。
夢は選択の余地のないストーリーによって進行する。
それ故に夢なのだ。

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記憶とは不思議なもので、相手が歳を重ねても、最後に逢った年齢のままで止まり、こちらもそこそこ若いらしい。

当時のように楽しくおしゃべりしたり第三者が介在したりとストーリーは多彩だが、夢の中の感情はその時のまま一時停止状態で、いとおしく思う。

可愛く、そしてきれいな100点満点の人だった。

以後その人がすべての基準になり、その基準に沿ってでしか対象を見ることができなくなった。

他人はそれを痘痕もエクボと言うが、決してそんなことはなかった。
私の審美眼は確かである。



 


            江の島 八月十日


     陽に焼けた肌を寄せて くちびるを噛みながら
     二人で聴いたのは 愛の歌

       苦しい時はいつもこうして そばにいてあげる
       寄せては返す波の向こうに 届け この想い


     遠い海のその深く こころ閉じた貝になって
     いつまでも いつまでも眠りたい

       めくるめく この夜の中で 君は何を見るの?
       僕に抱かれて涙流すのは 愛していないから? 


       湘南の夜は波の音と 冷えたビール二本
       いつも君を好きなはずなのに 江の島の八月




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おそらく40年も昔の曲でライブ前のスタジオ練習時の録音。
私はボーカルと、後はエンディングでエレキベースをちょこっと弾いている。

今日一日くらいは思い出に浸ろう、そしてすべてを曝け出そうと心積もりをしてPCの前に座ったが、省みれば過去にこちらで大胆に独白していたことに気づいたので思いとどまる。

他人の夢や思い出など誰が興味を示すものか。
されど先日、姉が自分の見た夢を語っているのを目にした。

それは職場へ出勤しようとして様々なトラブルや妨害のため時間ばかりが経って焦りまくり、やっと着いてみれば自分の席には見知らぬ人が据わっていたという内容だった。

私もほぼ同じような夢を頻繁に見るので、うん、あるあると、いたく同感した。
姉や私に限らず、この手の夢は誰もが見るものなのだろう。

同時に、沈殿してすっかり忘れていた過去が、ひょいと夢に浮上することだって、誰もが思い当たったりするのではと想像した。
夢は本人と談合せず、独断で物語を進めると書いた所以である。

時は流れた。
あの人は来年の今日、「高齢者」になる。


 律の風きみかほはせのいとほしき    時雨亭


この記事へのコメント

美代子
2018年08月10日 14:49
 人間は一生の間に何度か恋らしきものを経験しますが、結局は心に残るのは一人だけですね。他の恋と何が違うんだろうと考えますが、思い当たるのは前世でのご縁です。笑。本当の恋とは前世ごと積み重ねたものかもと。笑。今生での恋なんてそれほど深くはなりませんものね。私の場合は、二十年のお付き合いがあっても、一度もお会いする機会もなく、一昨年、急に亡くなられてしまいました。笑。でも、恋は成就しないのがいいんですよね。今でも心の中では「ロバート・テイラー」です。笑。誰かを想い続けることが、生きる上でどれだけ励みになることか。笑。
時雨亭
2018年08月10日 18:00

 厄介なことに思い出は時とともに美化されます。コンニャロと思っても喉元過ぎればそれが可愛くなってしまうのですね。(^^ゞ 生まれ変わったらまた私を見つけてね、とか囁かれるともういけません。ゼッタイに探し当てるよ、とかなんとか言っちゃって簡単にその気になるのであります。男なんて単純でチョロいもんです。一般的に男の方が未練を引きずるように聞きますけどどうなんでしょうか。だからこんなことを書く日も出て来ちゃうんですね、きっと。ツンデレがだ~い好きで簡単にギャップ萌えしちゃう時雨亭オヤジでした。(*^^)v