蝸牛の頭もたげしにも似たり


画像
カタツムリも関東ではこの空梅雨が辛かろう。
オサムシ(マイマイカブリ)には気をつけろよ、と声を掛けたくなる。
他にもカエル、ネズミ、タヌキや、ニワトリやチャボなどの家禽類なんぞも注意が必要である。

病牀六尺が生活空間のすべてであり、全宇宙だった子規には、タイトルのこの句以外にも類相句が多い。
今回は「仰臥漫録」に限ってピックアップしてみる。

  臥して見る秋海棠の木末かな

  秋海棠に向ける病の寐床かな

  痩臑に秋の蚊とまる憎きかな

  病閑に糸瓜の花の落つる昼


家人の秋海棠を剪らんといふを制して
  秋海棠に鋏をあてること勿れ

  移し植ゑし秋海棠や寐て見ゆる

  筆も墨も溲瓶も内に秋の蚊帳

  首あげて折ゝ見るや庭の萩

  植木屋は来らず庭の茂りかな

  芍薬の衰へて在り枕もと

  紅梅の鉢や寐て見る置処

  紅梅の散りぬ淋しき枕元


子規の晩年については語り尽くされているので出しゃばらないが、「仰臥漫録」の中だけでもハエの句が頻出するので、当時の衛生環境が知れる。

  秋の蝿殺せども猶尽きぬかな

  秋の蝿追へばまた来る叩けば死ぬ

  秋の蝿叩き殺せと命じけり

  秋の蝿蝿たたき皆破れたり

  活きた目をつつきに来るか蝿の声

  病室や窓あたたかに秋の蝿

  驥の歩み二万句の蝿あふきけり

  三尺の鯛や蝿飛ふ台所


病牀六尺の小宇宙にあって、自ずと嘱目に傾くのは自然なことであろう。

一日間所見の動物

庭前の追込籠にはカナリヤ六羽(雄四雌二)きんばら二羽(雄)きんか鳥二羽(雄雌)ジヤガタラ雀一羽(雌)合せて十一羽 カナリヤ善く鳴く
○黄蝶二つ匇々に飛び去る ○秋の蝿一つ二つ病人をなやます ○蜂か虻か糸瓜棚に隠現す ○揚羽の蝶糸瓜の花を吸ふ ○鳶四、五羽上野の森に近く舞ふ ピーヒヨロリピーヒヨロリ ○蜻蛉一つ糸瓜棚の上を飛び過ぎ去る ○極めて小き虫やや群れて山吹の垣根あたりを飛ぶ ○茶褐色の蝶最高き鶏頭の上にとまりて動かず ○向家の犬吠ゆ ○蜂一つ追込籠の中を飛ぶ

 午後は北側の間に寐床を移したる故この所見は中絶せり また別の日を選んでやるべし

 (仰臥漫録より抜粋)

画像
蝸牛(ででむし)の頭もたげしにも似たり

カタツムリからハエへ話が飛んでしまったが、タイトルの句には「小照自題」の前書がある。

どのような小照かわからないながら、頭をもたげた蝸牛に自身の仕草を重ね、お前も俺と同じようなものだなと、不治の病床にあって、ある種、諦観が滲み出ている自嘲の光景は万人に伝わる。

カタツムリを見かける機会も減った。
関東の梅雨はいつ明けるのだろう。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2020年01月
         1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31   

過去の記事

テーマ別記事

最近のコメント

QRコード