隅田河堤にたちて船待てば水上遠く鳴くほととぎす


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橋の上から遠景や川面を眺めていると、松本零士氏がデザインした、宇宙船のような「ヒミコ」だか「ホタルナ」のどっちかわからないけど、水上バスが隅田川を上って行く。
よく見かける観光船である。

窓は嵌め殺し仕様に見える。
例えクーラーが効いても、これじゃ川風に吹かれる楽しみはないんだろうなと、余計な心配をする。

余計とは、乗るつもりがないからであって、どうでもいいことを考える暇があったら自分の行く末を案ずるべきなのだが、これって、内容も調べずに「怪文書」と切り捨てるのと同じだなあと苦笑するしかない。

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タイトルは江戸時代中期から後期にかけて活躍した加藤千蔭(橘千蔭)の歌で、わかりやすいにも程があるくらいの歌意だ。
だからそれほど優れた歌とは思わないが、もっと翫味すれば作者の深慮が見えるのかも知れない。

加藤は国文学者、歌人、そして書道家でもある根っからの文人である。
十歳にして賀茂真淵の門下生となったが、万葉調一辺倒の真淵の教えに馴染めず(古今・新古今に傾倒した)袂を分かち、後に村田春海と共に江戸期の歌道の隆盛に貢献した。

私などの素人からすれば、万葉も古今・新古今も大差なかろうと思うけれど、学者さまとなれば、その違いは我慢ならぬほどのものだったわけだ。
それでも「万葉集略解」の著書もあるくらいの国文学者だから、古典全般に通じていたのは当然のことか。


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  違う観光遊覧船の往来も多い。


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タイトルの歌の他にも隅田川を詠んだ加藤の歌がある。

隅田川蓑きてくだす筏士に霞むあしたの雨をこそ知れ

題詞には「霞中春雨」とあって、この歌も「あしたの雨をこそ知れ」の結句などは凡庸にしか感じないが、凡庸の中にキラリと光るものを探すのが、読み手の真摯な作業なのだと思っている。

筏を操り、隅田川を上下する光景が消えて久しい。
今では木場角乗保存会が、江戸時代から継承している見事な妙技を披露してくれるだけになってしまった。

曇天の隙間から薄日が射しているけれど、川風はどこか湿っぽい。
現代の東京の下町や川端で、ホトトギスを聴くこともない。
関東地方の梅雨入りもカウントダウンに入ったようだ。



   川沿いのテラスから中央大橋の裏側を見る。

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