下衆の家に雪の降りたる


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東京ではまた大雪警報が出たが、今回は予想以上の降雪で、鉄道はもちろんのこと、バスやタクシーも含めて交通手段はゼロ。
まったくのお手上げで、仕事も休みになった。

タイトルは、枕草子四十五段 「にげなきもの」 について清少納言が綴ったもの。
「にげ」は「似気」で、似合わないもの、似つかわしくないものの意。
雪を見るたびに、この一節を思い出す。

それにしても言ってくれるではないか、お清さん。
宮中に降る雪は、内裏の朱に白が映え、また常葉木の緑とのコントラストも新鮮で、さぞ雅な光景だっただろう。

一方、下衆とはこの場合、下衆野郎の下衆ではなく、下々(一般庶民)の家を指す。
板葺はまだマシな方で、竪穴住居すら多く建っていた時代だから、「穢れのない純白の雪が内裏を覆うのはきれいだけど、庶民の板屋に積もるのは、せっかくのシチュエーションが台無しだわ」 程度の解釈で良かろう。

これを上目線と感じるのは現代人の感覚で、当時の身分制度、階級制度を考慮すれば、お清さんは決してタカビー(死語?)な女性ではなかった。
もちろん、中宮定子に仕えている女房としてのプライドも、多少は加味して読むべきだろう。

「にげなきもの」のくだりには続きがある。

また、月のさし入りたるも、くちをし。月の明(あか)きに、屋形なき車のあひたる。また、さる車に、あめ牛かけたる。また、老ひたる女の腹高くてありく。若き男持ちたるだに見苦しきに、異人(ことびと)のもとへ行きたるとて、腹立つよ。

また、そんな家に月光が射し入るのも、これではせっかくの風情が台無しだ、と書き、さらに、屋根の無い牛車も感心しないと、あくまで辛辣だ。
「あめ牛」の「あめ」は飴のことで、要するに褐色の牛も、お清さんには気に入らない。
だから、褐色の牛に曳かせた牛車なんぞを見たら、彼女の心情として我慢の限界なのだろう。

「老いたる女の腹高くてありく」は、男性との相関関係で、単に男より年上の女が妊娠して臨月間近なのに出歩いている、と捉えるのが正解。
若い男を持っているだけでも世間では恥ずべきことなのに、その男が他に異人(女性)を作って寄りつかなくなったと腹を立てるのだから、ホトホト呆れてしまうわ、といったところ。
清少納言の性格が、如実に際立った一節である。

まだ続く。

老ひたる男の、寝まどひたる。

年老いた男の寝ぼけ顔も、にげなきものと断罪しているから、たまに眠っていてヨダレを垂らしてしまう私などにも跳ね返ってくるので、もうやめる。
才女は近づき難い。



昭和初期に建てられた、鎌倉の古い家で暮らした時期がある。
清少納言からすれば下衆の家ということになるが、造りは丈夫だったし、欄間の意匠なども凝っていて、すこぶる住み心地の良い旧家だった。

当時、女性は二種類に分けられると単純に考えていて、それは紫式部タイプ、そして清少納言タイプだった。
多くの友人は賛同してくれたが、実は和泉式部も加えて、女性には3パターンの性格があると気付いた。
(今はそんな分類などしない)

一緒に暮らしていた女性は紫式部タイプだった。
ところが下衆野郎の私は和泉式部タイプの女性に心変わりし、鎌倉を後にしてしまった。
詳細を記するつもりは無いので、この話はこれにて終了。


 


 雪の送別


                   雪 の 送 別

                                   詩  秋山 賢治
                                   曲  管 理 人

             雪の朝 静けさに目を覚ます
             窓に映る 一面の銀世界
             君はまだ眠ったまま
             僕はベッドを揺らさずに
             煙草に手を伸ばす

             外に遠く 飛ぶ鳥の姿
             汚れを内に秘めた美しさ

             少しまどろんだ僕を揺り起こす君
             「見て、雪よ」
             子供のように 目を輝かせて
             空を仰いで
             「夜まで降れば、雪見酒ね」

             鎌倉での 初めての雪
             明日 僕は東京に戻る
             思い出して不機嫌な君
             雪の送別と思えばいい




もう30年も前の音源。
作詩者に無断で、詩の一部を変更した。
抒情と叙景の双方を感じる、私の好きな詩だ。



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この記事へのコメント

豆太郎
2014年04月29日 15:02
下衆の家に雪の降りたる・・・。
高校の古文の授業で習った事を思い出しました。

『雪の送別』、詩も曲も優しさに溢れていて、今までアップされた曲の中でもベスト5に入る名曲だと思います。
素敵な曲を聴かせて頂き有難うございます。
管理人
2014年04月29日 20:24
古文にあまり関心のない高校生には、枕草子の類聚章段の中でも、このような内容から教えれば興味を持ってくれるようです。
そこから持続させるのが大変なんですけどね。
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