時雨亭往還

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zoom RSS 不死身ばあさん

<<   作成日時 : 2017/12/05 22:00   >>

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米寿を目前に、この人、死ぬこと忘れてんじゃないかと思ってた一年半前。
突然、肺炎と心不全で緊急入院、さすがにこれで終わりと覚悟した。

人間なんてあっけなく逝くのを何度も見ている。
だから、高齢、肺炎、心不全の三拍子揃ったら、こりゃ駄目だと誰でも思う。

どっこい、ばあさんは不死身で、命に別状なしと、たった二週間で退院した時は単純にすげえなと、生命力に驚いた。

それでも二週間寝たきりは足腰を弱らせ、急に老け込んだ。
まあ、年齢を考えれば老けているのは当然で、だが私が生まれた時からの血縁だから、彼女の若い頃も知っていて、ずいぶんアグレッシブな面も多く目にしている。

その印象が強いから、どうしてこれくらいのことができない? もっと早く歩けない? などとじれったくなってしまう。
だってガキの頃にはおんぶしてくれてたんだから。

そうこうしてるうちに腎臓や胃などの循環器や消化器官が極端に弱って来た。
おまけにまた心臓も。
これは、ご近所のかかりつけ医の見立て。

じゃ、詳しい検査に行こうとA病院に三日後の予約を入れ、その前々日。
自宅近くの、わずか数段の階段でコケて、歩行困難になった。

この時は痛がってタクシーに乗れず、マイカーを出動させてB病院へ。
車椅子を借りて、そろりそろりと整形へ。

骨盤骨折で全治三ヵ月。
しかし翌日には腎臓の大切な検査予約が別の医療機関で待っている。
担当医は、それなら入院せずに自宅療養で、と言ってくれたのは幸運だった。

骨折で死ぬことはないが、腎不全は命にかかわるから延期は出来ぬ。
そこで、歩けないのを叱咤して、A病院紹介の、検査オンリーのCクリニックへ行くも、簡易採血で、この数値ではCTは無理ですと追い返された。


こんなふうにダラダラ書いてると、かなりの長文になってしまうので飛ばすが、それから腎臓や胃や心臓の薬の処方をしてもらい、消化器科では胃カメラも呑んだし、とにかく自宅(実家)で安静にして過ごした。

骨折は経過が良く、車椅子からシルバーカーへ。
その間にも心臓周りの動脈にカテーテルでステント治療したりの再入院もあって、自宅の万年床で寝て、病院でも寝て、退院後に向けての歩行訓練もままならぬ。

退院はしたものの、足腰の筋力が大幅に衰えているので、トイレ行くのも壁や家具伝いでやっとこさ。
帰宅後のリハビリを頑張って、そこそこ良くなったように見えたら、自宅で油断したのだろう、今度は座敷でフラついて転倒してくれた。

肋骨三本折れて、一本が肺を傷つけ、肺に血が溜まってるとの診断だった。
低血圧と筋力不足が原因の模様。
これまた入院。

そして退院。
当人は、ご近所に、今年は三回骨折しちまったと触れ回り、これは短期の認知機能低下の表れ。
こっちだって、あれ、そうだったっけか? と混乱するよ、いろいろあり過ぎて…。

短期間で二度も骨折して、内臓は心臓も腎臓も肺も胃も弱っているので、ほぼ多臓器不全の状態。
不死身ばあさんもいよいよ年貢の納め時かと思われた。

腎臓に良くないのは塩分とカリウム。
塩分はもちろん、カリウムも生きる上で必須だが、これが一般人と違い、命取りになる。

野菜、果物、ナッツ類などはカリウムばかりで、食事指導でも厳しい制限が必要と、釘を刺された。
野菜は必ず煮こぼす、バナナや柑橘類を始めとして、リンゴもブドウも梨もスイカも柿もキウイもメロンも何でも彼でも、果物全般はもってのほか。

ドライフルーツも、ブドウパンのちっこいブドウ一粒も駄目と言われたし、ジャムだって何だってご法度。
そしてコレステロールの問題がある。

ステントを入れたことで、心筋梗塞など当面の危機は回避したが、すでに血管がボロボロだから、ちょっと腕を家具にぶつけただけで、大きなアザが出来る。
血管のボロボロは毛細血管にまで及んでいる。

血液検査では、カリウムの数値は減少傾向でも、クレアチニンの値が平均値の上限を超えている。
ということは、腎臓でカリウムや老廃物などがろ過できず、慢性化しているわけだ。

脳梗塞や心筋梗塞を食い止めるため、血液をサラサラにする薬も毎食後に服用している。
それを踏まえて三度の飯を作り、筋力アップを狙って鶏の胸肉やささ身なんぞを使って食べさせる。

欠かさないのは納豆や玉ねぎ、たまに蕎麦だったりと、要するに、世間で血がサラサラになるよと喧伝されている食品が中心になる。

炊事洗濯掃除もやって買い物もしてリハビリもやって、家政婦とヘルパーとトレーナーの三役。
たった一人のばあさんの面倒くらいどうってことないが、実際は面倒である。

本人はお気楽で、階段を下りると、まだ朝五時過ぎだっつーのにテレビの前に座っていて、おなか減ったの第一声。
まだまだ長生きする魂胆のようだ。

夜中は、階下で何度もトイレへ行く音でその都度目が覚め、また今日も寝不足で一日が始まるかと思うとげんなりするから、思わないように気持ちを切り替え、急いで朝食の支度。

それでも確実に食事の量は落ちているので、ご飯ならちっこいお茶碗に軽く一杯、パンなら8枚切りを1枚程度。
でも糖尿病予備軍でもあるので、空腹時に血糖値の上がる甘いおやつを欲しがるから困る。

おやつは食後のデザートのお楽しみ、で納得させ、朝食を出して完食後のお薬タイム。
それを見届けてから洗濯。

七種類も飲んでいる薬の中には利尿成分も含まれているので頻尿は仕方ないが、ごくたまに、トイレに間に合わない時がある。

それはやっとトイレを教え始められるようになった幼児のようなもので、行きたいと言った時はすでに限界値なのだ。
いつだって尿意ドン状態だから、こちらは前もって、頻尿ならぬ頻繁に、トイレは大丈夫? と声を掛ける。

すると、まだ行きたくないけど行っとこうかねと立ち上がる。
まだ少しフラつくので、戻ったら、座る前に軽い体操やスクワットの真似事をさせる。

言わなければ絶対にやらないのだが、長生きしなくちゃいけないからねと、口とパフォーマンスだけは立派である。
そんなんじゃ筋肉なんてつかないよの指摘も、時に聞こえない振りを決め込むから、ばあさん知恵者だ。


介助や介護のことは、いくら書いても切りがないので終わらせる。
最近は短期記憶の飛ぶことがあり、何年続くかはわからないが、これからが本番である。
今は予行演習のようなものだが、いかんせんこちらの体力不足が口惜しい。

事情を知らぬ(理解できぬ)やはり高齢のご近所さんが、ミカンを持って来てくれた。
コタツにはミカンが乗っている。

ジーッと見つめながら、
「ミカンだね」
「そうだね、果物、もう一生分食べちゃったからね」

目の前で代わりに食べるわけにもいかず、別のご近所さんが来た時に、たらい回しする。
ビタミンCのサプリでも飲んでみるかと問うと、そんなもの嫌だと完全拒否。

別のご近所さんは、
「もう歳なんだから、好きなもの食べちゃえばいいのさ」
と無責任だ。

根菜類や葉物類を煮こぼしてもカリウムは残留するから仕方ないとして、しかし果汁100%の果物はカリウムも100%と思わなければいけない。


いつもは浮かんだ言葉も書き留めることなく過ごし、すぐに忘れてしまうが、今日は十七音や三十一文字を覚えているので、たまには記録がてら載せてみる。

今は俳句や短歌と向き合っていないので推敲はせず、初案のみ。


 はばかりに間に合はぬ夜や大根煮る


 その問いは今日七回目納豆汁


 薄味に慣れろ慣れぬの攻防も会話成り立つことの嬉しき


 カリウムを煮こぼしてゐる冬菜かな


 たかが42キロ背負ふも難し古暦


結局、ダラダラ書いて長くなってしまった。


たまに外食へ連れ出す。
シルバーカーは時として邪魔になるので腕を組むが、なかなか恥ずかしい絵ヅラだと思う。

食事を見ていると、天ぷらなどの揚げ物は衣を剥がして食べている。
本人はまだまだ生きる気満々である。

画像
DHAを摂らせようと、お寿司を食べに行くと、一人前は多すぎて、シャリのほとんどがこちらに回って来る。

だったら刺身の盛り合わせ頼めばいいじゃん!

だからこのところ、炭水化物摂取過多で、体重が増加傾向にある。

せっかくの標準体重が台無しになってしまうが、健康は維持したいとのジレンマもある。

よしよし、ばあさん、味噌汁は飲まずにアサリの身だけ、ほじって食べてるし、茶わん蒸しのギンナンも承知の上で残した。

「そろそろ果物も食べられるようになったと思うんだけど」の発言あり。
嗚呼、やはり自分の病状がわかってないのである。

そこまで制限させるのは忍びないが、服毒自殺になっちまうではないか。
一生食えないんだよ、と胸の中でツッコミを入れる、可哀そうだけど。

ばあさん来年で、数え年90になる。
長生きも立派な芸のうち、ご長寿流家元になって欲しい。


 お手洗ひ間に合ひし日の嬉しさよ老婆誘ひて寿司喰ひに行く


介護は闘争に近い、と変換するつもりで打ち込んだら、介護は逃走…、と出た。
このパソコン、学習機能があるのか、はたまたご主人様の心情を忖度しているのか。

4年も使っているガラケーはたまにフリーズしてメールも送受信できないし、通話はかろうじて通じるから、何とか間に合わせているけれど、携帯は忖度してくれない。

遅ればせながら、いよいよスマホデビューか。
ショップからは、らくらくスマホの案内メールがしつこく来ていたが、それも受信できぬ。

一方で、生死の境にいて、現在は悪い状態で安定(こんな表現でいいのか?)している友人がいて、友人もこちらも八方ふさがりで先が見えずに立ち往生している。
参っちゃうよなあ、まったく。

今は介助の序ノ口で、いずれ本物の介護が始まる。
どんな状態でも、長生きして、たまにはボケかましてくれるとありがたい。

ばあさんをご近所に頼み、半日、どこかへ逃走しようかね、今のうちだから。
その前に、今日の煮物は少しだけカレー風味の変化球にしようと、献立に頭を巡らせている。


文章が長い!

ここまで読んでたどり着いてくれた方、ご苦労さまでした&有難うございました。

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