時雨亭往還

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<<   作成日時 : 2017/12/18 23:00   >>

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マイクロの後を斎場までマイカーで走る。

街行く人は、いずれ我が身とは思わず、無意識の条件反射のように親指を隠しながら、観念でしか車列を見ない。

死の現実を目の前にすると、何もかもが些末なことと気付く。

起きて食べて寝る。
生き物とは、何て単純な作業だけを繰り返し死んでゆくのだろう。

前を走るマイクロは時に裏道を走り、時短を狙っている様子。

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あちらこちらから霊柩車やマイクロやハイヤーが、この一点に吸い寄せられるように到着している。

斎場はブラックホールのような場所だなと、ふと思った。

無になる、転生する、極楽へ行く、生者は勝手な理由付けで死を演繹するが、観念をこねくり回しているようで、いささか気分が悪い。

最後のお別れも時短され、釜の扉が閉じられた。
この瞬間が一番恐ろしい。

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焼き上がるまでおよそ一時間強。

控室のアナログ時計の針が進む残酷さは耐えがたい。

その酷薄さを紛らわすように、誰もが茶菓子に手を伸ばしたりして、まったく関係のない放浪ザルの話などで遣り切れない時間を消費させる。

ちょっと外の空気吸って来ると告げて出れば、まだ続々と到着する車列。

温かい缶コーヒーを飲みながら、これじゃ人口も減るだろうなと納得した。

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喪中はがきもここ数年、必ず数枚届くようになった。
こちらからは、来年か再来年に出すようになるだろう。

残された者は、これから各種手続きや遺品整理などの煩雑な問題が待ち受けている。
結局、死んだ者勝ちだなと思う。

斎場へ来る途中、郵便局前では、寒風の中、職員が年賀状を手売りしていた。
寒いだろうに、ご苦労さまと言う他はない。

ノルマがあるのだろうが、先日、台風の吹き降りの午後、郵便局の人が訪ねて来た。
シャチハタを持ってドアを開けると、大きなカゴに、ビニールに包まれた大量の年賀状が入っていた。

こんな天気の日に、ここまでしなければいけないのかと、働くことの厳しさを見た。
丁重に断ったが、笑顔を崩さず、お邪魔しましたと隣家へ向かった若者。

楽しいわけがない。
それを懸命にこなす若者の姿を見て、若い命を生きている姿に、不覚にも感動してしまった。

我々世代の幕はすでに閉じかけていて、このように世代交代するのだと実感させられる。
だからもう我々は出しゃばらず、社会や政治や経済は、彼らに任せるのがよろしい。

中高年たちは、絶対に戦争へと向かわぬよう見守るだけでいい。

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戻って精進落としの少し遅い昼食。

骨上げの場面は思い出したくもない。

6人で力を合わせて納棺したのに、わずか一時間で小脇に抱えられるほどの壺に縮小され、ぼんやり質量保存の法則に想いを馳せたが、何がどうなったのか判然としない。

忽然と消えてしまった個体がどうにも不思議で、納得できかねる。

無理にでも了解させなければ、踏ん張って持ちこたえている自我がぐずぐずに崩れそうな予感が消えない。

宇宙の星になる、空に帰る、風になるとか、誰もが古人の「言葉」を無断借用して見て来たような無責任なことを言うが、思い出は反芻するたびに美化され、変質するのだろうとの確信のみが今は胸にある。

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見透かされたのか、「大丈夫?」と、数人から声を掛けられた。

51歳で逝った兄はもとより、親しい友人たちが年金受給の開始前に逝っている。

このブログにしても、コメントを寄せてくれた親友と友人、合せて三人が、すでに故人となっている。

今回は、忙しかった私の代わりに記事まで書いてくれた人物だけに、プライベートでも親しかったから、浮き足立ってしまった。

私だけ取り残されて、いずれ高齢者になるのかと思うと、もう友人知人は増やしたくないと改めて思う。

同時に、私は疫病神以上の死神だろうとも思う。
近づく男たちは、ことごとく死んでゆく。

その自覚が何年も前からあるので、意識的に友人関係をフェードアウトさせている。

縁遠くなった友人も多くいて、それでも今も好感を持ち続けているのは考えるまでもなく幸せなことで、友人に恵まれ過ぎていたが、危険! オレに近づくな、ということだ。

逆に、妙齢の女性は接近すると、健康で長生きできると思われる。
遠慮なく、どんどんいらっしゃい。

私はいつ逝っても構わないが、親しい人たちは死んで欲しくない。
その意味で、私は大丈夫である。

食事は喉を通らなかった。
ビールを飲んだら天地がグルリと回転し、ブラックホールへ引き寄せられるような気がした。


 よい道がよい建物へ、焼場です    山頭火


気を散らすため、ダラダラと余計なことばかり書き過ぎた。

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